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FLOATING BOX
~3D思考による立体構成空間~
1.多様な条件、多様な希望

2006年の夏、弊社に1通のメールが届いた。
「土地を所有しているが、そこに住宅が計画できるものか?」という問い合わせである。


ちょうど、OT邸のオープンハウスを開催していた時期であったため、そちらをご案内した後に近くの喫茶店で詳細を伺った。
 

建設場所は静岡市駿河区、駿河湾を見おろす高台である。
東に斜面を背負って造成された土地で平坦な部分が少なく、住宅部分と駐車スペース1台分の間には擁壁によって段差がつけられており、その先は水路ごしに道路に接している・・・そんな土地である。


ここで外部環境に求められるのは、
・複数台の車の乗り入れが容易にできること
・キャンピングカー(車高2,800mm)が駐車できること
・傾斜地上部にアクセスできること
・南側に将来テラスを作るためのオープンスペースを残すこと
・・・などであった。

3.やわらかなスペース規定

計画段階からわかっている事もあるし、住んでみないとわからない事もある。
今回はクライアント(お客様)とともに「このスペースで何ができるか? どこまでの事ができるか?」
というイマジネーションを何度も何度も可能な限り膨らませてみた。
何百通という電子メールの往復とともに・・・。

その結果、得られたのが2階吹抜まわりの6連引戸であり、ロフトであり、スキップフロアである。
また、音楽演奏用の半地下空間のスタジオ、黒タタミの居室、黒いカウンターと強化ガラスで構成された明るいバスルームもこの建物の特徴をよく示している。

これらデザインによって空間は時に分節化され、時に一体化する・・・
「フレキシビリティ(柔軟性・適応性)の高い場」=やわらかなスペース規定というコンセプトの結実がここにある。

今後、南庭には芳醇なオープンスペース構築の計画も予定されている。
全感覚的に愉しむ住宅での生活はスタートしたばかりだ。 

参考リンク:建築デザイナーズ ブログエントリー「オーダーキッチンの魅力」(2008/01/17)
全体構成の次にじっくり時間をかけたキッチンに関する詳細をブログで紹介しています。
併せて是非御覧ください。

2.空間思考
スキップフロア / キャンティレバー  / ピロティ

敷地面積は100坪以上と広い。
だが、土地形状が平面的にも高さ的に複雑なため建設可能なスペースは限られている。

そこで駆使されるのが「立体的な空間思考」である。
まず、エントリーは地階からと考えた。

これは、最下層のスタジオのフロアを駐車スペースの高さに近づけることで、
宅地地盤より1メートルほど地下に埋もれるため、法規上「地階扱い」となることによる。

1階はLDKとなっている。
ここには50インチ超のテレビの設置と液晶プロジェクターの画像投影が求められた。
ホームシアターで考慮せねばならないのが、光と音の環境である。
ここでは西側壁面に開口部を設置せず、そこをプロジェクターの投影面とした。
光と風は上部4箇所のトップライトでコントロールしている(液晶テレビは南面設置)。


音環境は5.1チャンネル対応の配線を行った。
投影面は一般リビングエリアから1.2メートル上がったアイランドキッチン上となっているが、
このスペースの床が高いのは理由がある。
キャンピングカーの駐車スペースを確保するための思考だ。
キャンピングカーの車高は一般車よりも1メートルほど高いため、通常の軒下空間には入らない。

そこで、敷地の有効利用のために擁壁からせり出したヴォリュームは
「キャンティレバー(片持ち梁)」によって吊り上げられ、通常1階フロアよりアップしているのだ。

これは・・・そう、「スキップフロア」を外部空間にも応用したキャンティレバーのピロティである。
もちろん、構造は地下1層=鉄筋コンクリート造、地上2層=鉄骨造という構成だ。


ピロティとは?
柱だけで構成されている壁のない階をもった建物の形式のことで、ピロティとは、フランス語で建物を支える杭のこと。

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