風景を映し込む家
~ with landscape
特徴のある家を求めて
「住宅らしくない、違和感のある建物を作ってもらえませんか?」・・・屈託なく笑う御主人の一言から計画は始まった。市街化調整区域における建てかえ・・・田園風景が広がる開放的な地で大切にされたキーワードは「光・風・景」。休日を大切にしたい家族の意向から、2階に大きなLDKスペースと洗面・バスルーム、1階に寝室、子供室、収納スペースを置く。そして、これらスペースに適切な光と風と景を用意する・・・このゾーニングをベースとして検討がスタートした。
光 ~ 隣地に対して積極的に開く
幸運にも敷地南隣に母の家がある。そのため、今回はプライバシーの心配なく南に大きな窓を持つことができる。ならば、他の三面道路(東・西・北)からの採光は控えめであってよい・・・場合によっては、なくてもよい・・・という結論に至った。2階バルコニーの大開口サッシは巾256cm、高さ220cm・・・
一方、道路に面する窓の基本寸法は巾165cm、高さ30㎝・・・このため、外からは想像もつかないほどの明るさが確保されている。
風 ~ 室内に「気」の流れを生む
横長の窓は、採光の優位性、防犯上の安全性とともに、換気効率の良さも特徴としてあげられる。換気性能は窓サイズと設置場所によって決まる。一見して窓が少ないように見える この住宅だが、内部は空気の流れが周到に計算されたものとなっている。1階ホールの南窓と北窓から入る風は、階段スペースを経由して2階に上昇し、バルコニーの大開口へと流れ出てゆく。全方位にわたって十分な通風を確保できる田園地域の特性を考慮したところから見出された理想的重力換気の好例と言えよう。
景 ~ 環境を写し取る外壁
2階の東外壁には、黒光りする窯業系サイディングを採用した。巨大な鏡のように艶やかなこの外壁は、青空、雲、田圃の緑を映し出す。周辺環境を見るという不思議な視覚体験ができる。それ以外の部分は、ガルバリウム鋼板を大波ヨコ張りとした。インテリアはモノトーンで統一。モダンテイストの上質な空間に仕上がった。住宅というよりもファクトリー、ギャラリー、店舗といったテイストに近い。御主人が希望する違和感に寄り添うものになった。