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吊り足場 ~ アーティスティックな美しき仮設工事




3月。少しずつ柔らかな春の気配を感じる季節となりました。 建築の現場には、建物が完成すると同時に姿を消してしまう「仮設」と呼ばれる工程があります。今回は、そんな仮設工事が生み出した、イリュージョナルなひとときのお話です。

 


現場は静岡市駿河区。 物流倉庫の作業スペースを覆う、大型テントの張替えのための改修工事です。物流の要である倉庫は、日々の歩みを止めることができません。トラックやフォークリフトが頻繁に行き交う日常の業務を継続しながら、いかに安全を確保し、工事を進めるか。

 


そこで私たちが採用したのが「吊り足場」でした。下から単管を組み上げる通常の足場とは異なり、上部の構造体から吊り下げる工法です。 高所作業車を使い、倉庫作業の合間を縫うようにして空中に架けられた足場。その下では、これまで通りに車輌が通り抜け、物流の鼓動が続いています。

 


規則正しく連なる金属の足場板が、一直線に空中に浮かび上がる姿。 機能性と合理性を追求した結果として現れたその構造は、無機質でありながらも、まるで幾何学的なアートやインスタレーションのような美しさを放っていました。

 


工期の1か月間。 薄暗い倉庫の隙間に浮かび上がったこの吊り足場は、解体するのが惜しいと感じるほど、イリュージョナルでアーティスティックな空間を創り出してくれました。

 


そして本日、無事に足場払い(解体)が完了しました。 役目を終えた美しき「仮設」が姿を消すと、そこには春の青空に鮮やかに映える、真新しいグリーンのテントが現れました。 無事に仕上がったその清々しい姿にもまた、深く感動をおぼえます。

 


日常を陰から支え、美しく消えていく。 建築における「構造」と「時間」の奥深さを改めて感じた、現場からのご報告でした。

 



今回もお読みいただき、ありがとうございました。


(久保田正一)



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